ADHDは実行機能障害のためにちぐはぐな行動をしてしまいます
ADHDは実行機能障害のためにちぐはぐな行動をしてしまいます
実行機能というのは何かの目的のためにとるべき行動を判断し、実際に目的に沿った行動をするための機能です。ADHDはこの実行機能が上手く行っていないため判断や行動がちぐはぐになります。
実行機能とは?
「実行機能」という概念は脳科学の中でも比較的新しい概念で、実際にどんな種類の「実行機能」があるのかはまだはっきりと解明されていません。でも、実行機能は確かに存在し、脳のたくさんの神経回路が連携し合って機能しているものであることは間違いないようです。
「実行機能」は簡単に言うと、自分が置かれている状況を判断し、その状況に適応的な行動をとるためにはどうしたらよいのかを判断し、適切な方法で実行するための機能です。
「実行機能」にはたくさんの要素があります。一つの行動を達成するときには、たくさんの要素が相互に作用しながら働いています。
ADHDで障害されている実行機能
たくさんの実行機能のうち、ADHDの症状に特に大きくかかわっている要素は次の6つです。
- 取り掛かり:課題を整理してその課題に優先順位をつけて取り掛かる機能
- 焦点化:課題に対して注意を集め、注意を維持する。注意が他に移動する時も適切に行えるように調節する
- 努力:課題を遂行する為に努力を続け、処理の速度を維持したり調節したりする機能
- 感情:課題を行う上で欲求不満を管理し、感情を調節する機能
- 記憶:ワーキングメモリーを活用する
- 行動:自分の行動を客観的にモニタリングし、修正する機能
実行機能が上手く働かないとどうなる?
あなたが上司に、今日中に入力してほしいと資料を渡しました。あなたがとるべき行動はどういうものでしょう。
- 資料の中身を調べ、効率よくできるように計画を立てる。
- 集中して間違いが無いように入力作業を行う。
この2つの行動さえ継続してできれば、上司に頼まれた仕事は達成できるでしょう。では、ADHDで障害されている6つの実行機能が働かないとどういうことが起こるのでしょうか。
- 取り掛かりの障害:資料の中身を見ない。計画を立てることなく、手当たり次第に仕事を始める。
- 焦点化の障害:単調な入力作業を行っていると、飽きてしまう。不注意になる。他の刺激に気持ちが移りやすく、一度別の行動をとってしまったら元の作業に戻りにくくなる。
- 努力の障害:単調な作業が苦痛になってくると、作業が進まなくなる。
- 感情の障害:単調な作業が苦痛になり、嫌気がさす。イライラしてくる。
- 記憶の障害:作業がどこまで進んでいるのか分からなくなってしまう。
- 行動の問題:作業に飽きていい加減な行動になってしまっていても、自分の不適切な行動に気が付かない。気が付かないため修正ができない。
仕事に対するこういった行動は、他の人から見たらとてもやる気がなく、自分勝手に映ります。その上、不注意になりがちでミスが多いとなると、信用を失ってしまいます。
実行機能障害は脳の機能障害で、その人が故意に仕事をいい加減にしているわけではないのです。ADHDに対する誤解はこのようなところから起こるようです。
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