ADHDと誤診:うつ病とADHDの鑑別ポイント
ADHDと誤診:うつ病とADHDの鑑別ポイント
ADHDの特性によるストレスから抑うつ状態になったのに、うつ病だと診断されることはよくあります。抑うつ状態の治療だけを行っても根本的な解決に至らないので、やはり原因にADHDの生きにくさがあるのだということを医療機関には見抜いてほしいものです。
今日はうつ病とADHDからの二次的な抑うつ状態との見分け方をお伝えします。
「うつ」の現れ方
うつ病とADHDからくる抑うつ状態の見分け方の一番のポイントは、「うつ」の症状の現れ方です。
ADHDが原因の抑うつ状態は、ADHDの特性により起こった失敗体験がひきがねになっています。
「レポートの提出が間に合わなかった。」「仕事の発注で大きなミスをした。」など、何か大きな出来事が原因になっていることが多いのです。
うつ病の場合、先にうつの症状があらわれます。
気持ちが落ち込む、集中できない、考えがまとまらない、やる気が出ない、悲観的になる…。
失敗体験はうつ状態が原因で起こります。
「気持ちが落ち込んで勉強が手につかず、レポートが間に合わなかった。」「集中できず、考えがまとまらないので何とかやり遂げた発注にミスがあった。」などです。
睡眠障害の現れ方
ADHDの睡眠障害は、主に「寝つきの悪さ」と「目覚めの悪さ」として現れます。ADHDの睡眠障害の原因は次の事が原因だと考えられます。
- 実行機能の障害により、寝ようと思っても寝るための行動に移れない
- 体内時計の乱れにより睡眠のリズムが乱れやすい
これに対して、うつ病の睡眠障害は、早朝覚醒が多いのです。早朝覚醒は朝異常に早く起きてしまい、寝付けなくなってしまいます。起きた時に、強い不安感や焦燥感に襲われることもあります。
子供の頃の情報
ADHDの特性が隠れていないかどうかは、子供の頃の情報がとても大切になります。
- 忘れ物が多かった
- 約束を守れなかった
- 落ち着きがなかった
- ぼんやりとしていることが多かった
- とても不注意だった
など、子供のころにADHDを思わせるエピソードが無かったか考えてみましょう。
もしも、当てはまらなかったとしたら、自分が親から手厚い保護を受けていなかったかということも考えてみてください。
忘れ物が多い子供だったから、母親が忘れ物をしないよう、常に気を配ってくれていたなど、周囲のサポートで学校生活に適応していた人が、親元を離れた生活をして急に社会に適応できなくなり、抑うつ状態になることも良くあることなのです。
思春期時代の情報
思春期時代の友人関係はどうでしたか?特に、同性の友人と有効な友人関係を築けていたかどうかは大きなポイントになります。
ADHDは対人スキルが未熟になりがちです。
思春期は同性の友人とグループを作り、その中で自分の立ち位置を確立しながら友好関係をはぐくんでいきます。不安定な情緒の集団の中で、友情関係を維持しなければなりません。思春期の対人交流で求められる対人スキルは意外と高いのです。
思春期に、男友達はとても多くて一見活発だったけど、女子同士の関係はあまりうまくいかなかった。など、ADHDは思春期時代同性の友情関係でつまづいた経験を持つ人が意外と多いのです。
うつ病とADHDの治療の違いは?
うつ病であれ、ADHDで二次的にうつ状態になっているのであれ、最も強く表面に現れているのは「うつ」の症状です。ですから、うつ病にしてもADHDからくる抑うつ状態だったとしても、優先的にうつの治療を行います。
問題はその後です。
病気の症状が落ち着いてきたら、病気の原因である根本的な問題に対して治療を行っていかなければ、同じことを繰り返してしまいます。これも、うつ病もADHDも同じことが言えます。
うつ病の人は、物事のとらえ方や、責任感の強さ、完璧主義などうつ病になりやすい性格傾向を自覚し、考え方や行動を変えて行くような治療を行っていきます。
ADHDは、ストラテラなどの薬の力をかりて実行機能が上手く働くようにします。その上で、生活を送るうえで様々な工夫を考えていきます。
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