ADHDと愛着障害3:ADHDと愛着障害はどこが似ていてどこが違うのか
ADHDと愛着障害3:ADHDと愛着障害はどこが似ていてどこが違うのか
ADHDと愛着障害は類似点が多く、ベテランの精神科医でも鑑別が難しいようです。どのような点が似ていて、どこが違うのかをみていきましょう。
愛着障害と解離
愛着障害を持っている人は、ストレス場面になると「解離」という現象をおこします。
「解離」とは、「今ここにある自分」を構成している意識や感覚、記憶、思考、感情といったものが統合を失ってしまった状態です。
愛着障害者は幼少期から強いストレスにさらされています。「解離」は絶え間なくさらされるストレスから脳を守るための防衛反応だと考えてよいでしょう。
「解離」では、次のような反応を示します。
- 忘れる:ストレスを与えているエピソードそのものを忘れてしまう。
- 空想に耽る:現実に意識を向けないことでストレスを回避する。
- 没頭する:外的な刺激にのめり込むことでストレスを回避する。
- 切り替える:ストレスから感情を切り離す。何も感じない失感情状態になる。
愛着障害者が解離している状態の行動は、客観的には「忘れっぽくてぼーっとしているけど熱中しやすい。」という行動になります。
また、愛着障害者は常に危険にさらされているような危機感に苛まれています。そうすると、脳内物質であるアドレナリンが常に放出された状態になります。そのせいで愛着障害者は落ち着きがありません。
落ち着きがなく、わるれっぽく、ぼんやりとしていて、過剰に熱中する。
まさにADHDと同じですね。
ADHDと愛着障害の相違点
では、ADHDと愛着障害の相違点はあるのでしょうか?
端的に言うと、ADHDは単純で、愛着障害は複雑だという言い方ができます。
愛着障害者は常に不安を抱えていて、対人面において複雑な感情を抱いています。表面的には愛嬌があって親しみやすくても、情緒的には距離をとっていたり無関心であることが多いのです。
ADHDは一般的に裏表がなく、人懐っこい方が多いですね。
ADHDも愛着障害も、宵っ張りの朝寝坊さんが多いのですが、1日を通して行動のムラがないのがADHDで、愛着障害は午前中は抑うつ気分が強く、夕方からハイテンションになります。
朝はオキシトシンというホルモンがストレスホルモンを抑制しています。オキシトシンは愛情ホルモンと呼ばれるホルモンで、愛着障害者はオキシトシンの分泌が少ないのです。愛着障害者が朝抑うつ的なのもオキシトシン不足から来ているものだと考えられています。
オキシトシンについて詳しくはこちらに記事をご覧ください。
ADHDも愛着障害も、脳の報酬系の機能が弱いことが分かっています。
ADHDでは、報酬が増えるとドーパミンの分泌が高まります。しかし、愛着障害では、どんなに報酬を釣り上げてもドーパミンが分泌されません。
報酬系の機能が働かないと、「これをやったらメリットがある」と考えにくくなり、やり終えた後の「やりがい」も感じにくくなります。そのため、常にやる気がなく、報われない気持ちを持ちやすくなります。
愛着障害者はADHDよりも「報われない」という気持ちを持ちやすく、報われるための行動も進んでとろうとしないのです。
ADHDと愛着障害の治療
ADHDの治療薬にはストラテラとコンサータがあります。
ストラテラは愛着障害の治療にも有効なことが分かっていますが、コンサータは愛着障害の症状を悪化させる可能性があります。
ただし、愛着障害はストラテラを飲んでいたとしても完全には良くなりません。愛着障害を治すための治療を時間をかけて行わなければ根本的な解決にはならないのです。
愛着障害の治療は、時間をかけて行う必要があります。
専門家のカウンセリングを受けながら、
- 安全基地をつくり
- みたされなかった愛着の傷をいやす
- 過去と和解する
- 役割と責任を持つ
という治療過程を経て改善していきます。
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